SLにおける日本の企業進出とか、メタバース関連会社対しては、私は特に意見を持っていないのですが、先日知り合いから、「SLのこのあやふやな経済の仕組みでは、そのうちどうなるのかもわからない・・」という、まあセカンドライフの”経済”に最近その方は、疑問を持ち始めてるようです。
前にもこのブログエントリに、”SLには今後も”株式”は存在しないでしょう”と私は書きました。
まあ確かにL$を現実のお金に換えられたとしても、為替レートはかなり低く割に合うほど儲けるためには、数十万L$を常に視野に入れないと、SIM経営をSIM内の売り上げでまかなうのは、現在ではかなり困難でしょうね。^^;
SLの経済は、リンデンも公式に4半期経済状況を発表している中にも、ハッキリとそれが見てとれますが、リンデンの利益が出せる部分は土地の提供による、オークションでの”初期価格”と、維持管理費の中にでしか納めることは出来ません。
何故ここで”初期費用”といったのか?といえば、例えば個人であろうが、会社規模であろうがSIMオーナーがその土地を切り売り、レンタルする事に置いてはリンデンは維持管理費というカタチでしか費用を徴収できません。メインランドは少なくとも提供後のオークションによって相場が決定しますから、その後どう転売しようとリンデンは介入する事はありません。
となると、SL経済のほとんどはSL住人同士でL$を対価交換する事で、大半が成り立っている。ということになるでしょう。問題なのはこの”対価交換”の価値を決める基準です。
現実世界では、ネームバリューや、資産価値や運用による信頼度と生産性から、規模が大きな会社がしばし市場を独占します。当然大きな経常利益を出せるのですから、株を公開した場合、キックバックとして株主配当を考えれば、株式である以上、資本が多くなる・・設備や開発に投資、銀行から借り入れる際の”信用”も得ることが出来ます。
企業が純利を多くあげるには、ただ単に良い物を作れば売れるはずという単純構造が、幅をきかせないのです。
よく考えてみると、SLはその正反対であることがわかると思います。
SL市場を独占しているのは、相変わらず素人であり、ある種無名のクリエイターたちです。
それと、一見物や土地にL$を使っているが大半にみえるので、(もしくはキャンプなどの寄付)あたかも市場が存在しているかのように錯覚してしまいますが、実体はまるで逆で、実質経済は買う側と提供者、生産者とが区別されているはずが、SLでは全て同列になっています。
SLで様々な物や土地を買ったり作ったりするよりも、誰かが作った物を買った方がいい・・というのは、現実では「テレビを作れるけど買った方がお得ね」といってるようなもの。つまり、SLとRLの意識はまるで正反対なのです。
生産者が消費者となっている世界なので、価値観があるとすればそれは資本力やネームバリューではなく、「素晴らしいもので、L$を支払っても欲しいから買う」という、いわばクリエイターに対する消費活動であって、お気に入りのショップがいくつもあっても、結局の所ショップより、「商品」に対する賞賛が多いのも、なんかその部分を示しているような気もします。
そこへ、RLの大企業がやってきて、広告をいくつも出してフリーで良くできた商品を並べても、あまり見向きもされないのは、その背後に「RLへ行くための手段であって、SLはその道の1つに過ぎないからだ」という意識が見透かされてるいるからかも知れません。
SLを道具の1つとして見ているわけですね。住人にとって見れば、自分も道具の1つくらいにしかみていなんか?と悟られるのかもしれませんね。
Making of Second Lifeの著者、ワグナーさんは、「住人にとってテレポートは、TVのリモコンに等しい。興味がなければさっさと移動するからだ」とあり、そもそもがそこに居座らせて”定住”、”定着”を夢想して、人気SIMとして宣伝や企業誘致に活用しようという事自体、どだい無理がある・・そんな気もします。
で、本日はクリスマス・イブですが、そんな中先日以下のようなニュースが駆け回っていました。
http://magsl.net/archives/2008/12/23141139.php
http://slcom.jp/modules/wordpress/index.php?p=298
後者は自白で、撤退理由は経済的理由と書いてますし、前者も理由は恐らく同じでしょうね。
そもそも、じゃぱらんどやマグスル、その他の日本人SIMにはお友達に会うためにしか行かないので、その場所が無くなったからといって、特に意見は私自身持っていません。
しかし、とある方から聞いた話では、一部SLを拠点としたメタバース・ベンチャーの中には、”社員になるためにまずSIMを買うように。”とか、”給料はその自身のSIMの売り上げから”といった、要するに歩合制を取っているところもあるそうで、一方で、SLに対する夢を語りながら、一方では現実の弱小零細企業(この場合、同じ零細でも技術があるけど資本が足りないという意味の会社は除かれます。)が経営幹部主導のワンマンという今時?のスタイルというお粗末なところも。
そもそもが明確な経営戦略もなしに、「SL儲かりそうだから、やってみた」そう捉えられても仕方がありませんよねぇ。
話が少し飛びますが、私が創刊号で紹介した場所には、既に無くなったところも出てきていますが、相変わらず人気のあるSIMは特にこれといったL$取引を行わず、純粋に”場所提供”のみで終始しています。何故でしょうか?
維持費はメインランドでのSIMであれば、ひと月それなりにかかってきます。年間では数万円ではききませんが、しかし已然としてそのまま、いえ、かえって拡張したり、SIMを改造したりしてまでも維持し続けています。
全くそれとは別に、そこに来る方はデフォルトの姿のままでは、気恥ずかしくなるのか、INして間もなくのひとは出来るだけ人目を避けるように歩いているのを見かけます。
そう考えてると、「この場所を存分に楽しむために、苦労してイカしたアイテムを探すか、買うかしてお洒落をしてそこへデートなり、出会いを求めたり、コミュニケートを取っている様子」が伺え知ることが出来るのです。
L$の投資はいわば自分に対する投資であることがわかります。
「素晴らしいもので、L$を支払っても欲しいから買う」というのは、RL以上に外観を整えたい欲求であり、TPを繰り返し、やがて人気SIMが出来るわけは「その場所を、お友達にも教えたい」からであり、その反復と増長が結局SL経済を支えているので、RLと全く逆。つまり完全なユーザー側に主導権が移っているのです。
ワグナーさんも書いてますが、多くのマーケティング企業や技術者は、SLをSNS(ソーシャルネットワークサービス)の1種だと思い違いをしているようです。
SLでコミュニケーションをとるというのは、例え大企業の社員だとしても、”たった一人のアバターとして”住人とコミュニケートしなければなりません。恐らく、あなたが「私はNTTの技術担当なんだ」といったところで、大した効果はありません。「すごい!!」・・その程度でチャットログは止まるでしょう。
対等の1個人としてコミュニケートをたくさんの人と取っていくと、それこそ生の膨大なリサーチをしているのと同じになります。理由は、あなたも住人の一人として存在しているワケなので、SLでは確かにネットやメール、書面よりももっと突っ込んだネタが拾えます。そして一緒に現場を見て回れるので、時間的制約はRLより遙かに少ない。
しかも良くある会員制のSNSでは、結局利用者がINしないとどうにもなりませんが、SLではそこら辺にブラブラウィンドウショッピングしている人に、気軽に話しかけられます。その人と接点がまるでなくてもです。
私は、ある一人の方とお話しをしていて、フト感じたのは、「この人はまだSLとRLを区別しているんだろうなぁ・・」ってことです。たしかにSLとRLは違います。
しかしSecond Lifeにリアルライフと同じように、意義や意味を持たせなければならないという意識は、まだSLをバーチャルとしてしか捉えていないと思うわけです。SNSで出来るほとんど事はSLで可能ですが、SLでやれるほとんどのことは従来のSNSでは出来ません。
RLに影響をもたらす何かをSLで見つけようとしても、SLではほとんど何も収穫がないかわり、RLでの影響をSLにもたらすことは、SNSよりも遙かに容易です。その証拠が、個人が経営するSLでの人気ショップなどがそうでしょう。
ちょっと発想の転換が必要なのかも知れませんね^^。